聞き逃すピロートーク




ふと男の顔を見た。
珍しく眠っている、とはいえ自分が少しでも触れようものなら恐らくは直ぐに目を覚ますのであろうが。ベッドの中で身じろぎして、体ごと男のほうへ向き直った。


もし自分がキラだと知ったらこの男はどうするだろう。

常に疑い疑われの関係を保っている僕ら、なのだが今一その想像は鮮明に描き辛い。――自分の敗北図なのだから余り心楽しい画でないことは確かだが、それ以上に寧ろそんな歪んだ均衡こそが阻害する第一要因のような気もした。

驚きはしない、だろう。でもキラだということを晒されるほどの、僕の失態には驚くかもしれない。 喜びはしないのだろう。淡々と結果を受け入れ、だが口元だけは愉しげに笑みを刻むのかもしれない。

それとも憤るのか、とも思う。そんな醜態を晒す自分をキラらしからぬといって糾弾するのだろうか。それは何よりも皮肉で、而して予想に難くないのだが。

「…竜崎」


もし自分がキラだと知ったらこの男はどんな顔をするのだろうか。

目を見開く、口元を歪める、そしてから視線を絞り斬りつけるのか。 それとも何か、



「……月、くん?何ですか…寝なさい」

伸びた手が適当に頭を叩いてそのまま落ちる。自分のより冷たいその手に、そっと頬を寄せて目を閉じた。

どんな顔をするのか、分らないけれど断頭台への餞に、少しでも哀しんでくれればいいと思う。

ただそれだけ、彼の刹那の全てを垣間見たいが為。今此処ですべてをぶちまけてしまいたいと思った。



(それでも冷たい手は心地好く、僕は黙って眠りにつく)







好きなんだ、多分