呼び寄せた破滅




彼がそのうつくしい指を伸ばすのをどこか遠くで見ていた。
飲み込んだ筈の   焦慮 が湧き起こるのを押さえて、ただすんなりとしたその感触を受け入れる。

「…お前にも代価を払ったつもりだったのにね」

突き上げる衝動。美しいだけの笑みに騙されたいと

「鎖を断ち切ったのはお前、だろう?」

酷く愉しげな瞳で問うてくるので、彼の差し出した手をやんわりと握った。 つい先程まで鎖で繋がっていた筈の左手。

「…貴方を、?」
「馬鹿だね、本当に馬鹿。」

くすくすと笑いながらしなだれかかる彼の腰を引き寄せながらもう一度訊く。

「私は、間違えたのですか?」
「ふふ、そんなこと僕に訊かないでよ」

妖艶なまでの殺気に息を呑む。

「どうぞお好きな様に」

ああ、きっと私は

「おとされた」
「竜崎って本当に馬鹿だね」







だからころしてしまいたい