哀れみを持って




「夜神くん」

と、呼びかければ彼はすい、と美しい軌道でこちらを振り返る。
日本人にしては薄い色の髪が夕日に映えて、さらりと彼の顔に明るい影を落とした
…のを、何処か遠く見詰めた

「流河?何」

澄んだ声が自分の仮初の名を呼ぶ。 落ち着いた口調が、呆れたようにもう一度それを繰り返した

「何ぼんやりしてるんだよ、行かないのか?」

本部、と促すように振られる首はすんなりと襟元に伸びて やはり赤い夕日をその影に落とし込んでいた

「夜神くんは、」

美しいといいかけて撤回する

「キラみたいな人です」
「…………それはどう受け取ればいいのか分からないんだけど」

「完璧って意味ですよ」
「…何に」

勿論私の中の彼に
私が見るその姿に

「夜神くん自身に」
「意味が分からない」

さっさと踵を返した夜神は心なしか歩調を速め構内を進んでいく。 怒ってるのか、とも思ったがこんなことは今更だ。

「照れてるんですか?」
「完璧って言うのはあんまり誉め言葉とは言い難いよ」

間髪入れぬ否定に、少しばかり笑ってやりながら言われた言葉を反芻する。

「別に言われなれた言葉でしょう?」
「そうかな」

子供がむずがるように、認めようとしない其の様にうっそりと笑う。 それならばそれでもいい

「完璧といわれるのがお嫌いでしたら、そうですね」


「夜神くんは、完全にキラです」
「黙れ狂人」

今度こそ怒ったに違いない後姿に、些かの修正を加えてやる

「それではイレブンナイン」
「……それは純度、のことだろう?確率じゃない」
「いいんです」

だから、
純度であって
確率なんかじゃあない

だって、これは最早
もしやではなく、どれだけ、

彼が


「完璧ではなくともそれが完全です」


私の中の築き上げた理想像



そうして彼はまた、美しい殺人者の笑みを浮かべて
慈悲を垂れる其の声で
諭すだけの穏やかな口調で

罪を浮かび上がらせる白い首筋を晒して
また微笑む。


「……100%お前の方が異常だ」







1=0.99999999…ですね神。
イレブンナイン。シリコンとか…(どうでもいい