言葉にし得ない殺意の裏に




月はその場に立ち尽くした。
竜崎は酷く緩慢な動作で月に近づいてそっと手を伸べた。


彼が酷く哀しんでいるので驚いた。(とはどちらの言か)
彼は恐らく直にでも其の体躯に触れたいと、思っていたのだけれど。 彼らはそうして暫くの間酷く張り詰めたまま、憐れな夢に生きる己の知覚に全力を注いでいた。嗚呼こうして目の前に彼がいるなんて。


(まるでゆめのようだ)
(そうそれはまるで命在りし頃の様な)



「会いたかった」
「愛してあげたかった」



最早ふたりの間に障壁は無く、そして其れ故に最早救われることはない。