遺した



書き上げたそれを僕は其れなりの満足を以て見つめる。
整えた形式に、綴られた内容はまた酷く儀礼的!

黒い罫線をそっと撫でれば、滑らかな手触りが優雅に指先を包んだ。
羽ばたく音は飽く迄も自分にしか聞こえないのだけれども 振り向きはせずに親しい其の空気に小さく頷いてやった

「月、それ何だ?」
「手紙だよ」



『さあ僕の独白を聞いてください、

僕はキラです!
新世界の神です

刑に処すならば磔刑に
償いを負わせるのならば手ずから茨を編んで頂きたく

この世界を旅立つ僕が一言残すならば
それは何故お見捨てになったか、なんて言葉ではない筈

此れを読んだ”君が”それを知りうるのなら どうか其れを覚えておいて

さあ僕の独白を聞いてください

僕は君を愛していたよ!』



「……ラブレターって奴か?」
「いやだなあ、リュークこれは」



遺書、って言うんだよ



「僕が死んだらあいつに読んで欲しいと思って書いたんだ」


黒い罫線をそっと撫でれば、滑らかな手触りが優雅に指先を包んだ。
そのまま辿れば、縁取るのは引き千切った不揃いなフォルム。


ノートの端から千切り取った、その厳粛な手紙


「L、読んでくれるかな?」

罪の無い恋情すら籠めて死神を仰いで見る


手紙を出そう


あとは宛名を記すだけ


そしてそれが出来ないことを僕は本当に残念に思う







絶対に出せない手紙
出したときには君はもうこの手紙を読むことも無く

多分迷ってた。