ハンプティダンプティの死因について



「たつやさん」


んん、と身じろぎをしてから目を覚ました竜也にケンイチは小さく溜め息をついた。寝ぼけ眼の横顔でケンイチを見やった竜也は、壮絶に不機嫌そうだった。それが別段彼の体質だとか寝起きだとかの状況に起因することではないとケンイチは知っていたので、宥める様に言葉を続けた。

「機嫌直して下さいよ、千秋楽の打ち上げが入ったんだから仕方ないでしょう」
「…しーらない」
「…もう仕事の時間でしょう?」
「お前には関係ないし」

竜也がぷいと子供じみた動作で首を背け、ケンイチは少し苛立った。

「…分かりました僕はもう行きますから、失礼します」
「あ、そ」

ひらひらと振られた掌に流石に怒りが込み上げて、思わず掴み取れば漸く竜也はまっすぐケンイチを見上げた。

「最初からそうすりゃいいんだよ馬鹿」

竜也の手を掴んでいるケンイチの手に、竜也は細く息を吹きかけた。吃驚してケンイチが硬直すれば、ま可愛いから許してあげる、と竜也は宣った。


「早く離せ仕事に遅れるだろ」


いっそ白けた様子で言い放たれた台詞に、ケンイチは頭を抱えたくなった。
(こんなところが好き、だなんて!)