鈍光を纏う




「触るな近寄るな消えてくれ」
「……夜神くん、流石に其れはないんじゃあないですか」

透明な雫を首に伝わせて夜神はじっとりと此方を見ている。
日差しの暴虐を許した室内は確かに適温というには高い。
空調の狂ったこの大学の構内は、その籠もった構造も災いして 確かに酷い暑さではあった。




「夜神くんは暑いのが駄目な人だったんですね」

目の前の項垂れる夜神の様子は尋常ではない。
また一滴の嘆きが彼の美しい膚を伝う。

幼い者を無条件でいとおしむ要領でじっと眺めていれば、 すんなりと白い手が力なく振られた。

「…視界に入るな、暑苦しい…なんで長袖なんだお前」
「私は別段難儀することはありません」
「こっちは居るだけで迷惑だ」

睨み付けるだけの力もなく、夜神はまたぱたりと机に突っ伏す。


僅かばかりの冷たさを追うように、無防備に投げ出された四肢。 気だるい視線は如何にも熱を帯びて


「…確かに夜神くんを見ていると暑くなってくるような気がします」
「何考えてる。爬虫類め、死ね」
「……」

だんだん殺気すら帯びてきた彼の口調に、そっと爪を齧る。



幼い者を無条件でいとおしむ要領で
無力なものを反射的に虐げたくなるその衝動



「やがみくん」
「……なに」


律儀に返される返事は矢張り
稚く、力なく


「涼しくなる方法を教えてあげます」
「…流河?」





「ひとをころしてみたらいかがですか」




透明な雫を首に伝わせて夜神は此方を見上げる。
日差しの暴虐を許した室内は確かに適温というには高い。
空調の狂ったこの大学の構内は、その籠もった構造も災いして 確かに酷い暑さではあった。

でも


「……巫戯気るな」

純粋な怒りに焼けるその視線は確かに切り研ぐ冷たさ
力ない人の子は忽ちその神性を思い出す



「キラ」
「……もし殺せるなら……」



いまここでおまえをころしてる




嘆きの色で流れる雫



幼い者を無条件でいとおしむ要領で
無力なものを反射的に虐げたくなるその衝動、其れに勝る

穢れないものを引き摺り落とす欲望



「矢張り今日は暑いですね」

伝う汗は、歪む口の端から落ちて地へと吸い込まれた。







二人とも頭沸いてる。ていうか私が。 しかし実際この二人夏は延々あのビルに引きこもり…
半袖の神を拝む機会よカムバック(矢張り沸いてる)