賽子を投げるパーセンテージ





流河は音を立ててコーヒーを啜った。月は少し退屈そうな顔で其れを眺めてから、手元のシュガーポットを流河の方へ押しやった。カップをテーブルに置いた流河は、其れを受け取って口を付けたそれにまた幾つかの砂糖を摘みいれる。

「……それで僕をキラだと、疑っているんだな流河は」
「いえまあ5%以下ですが」

投げ入れた砂糖は僅かな飛沫を上げて、テーブルに曖昧なベージュの奇跡を散らす。月は嫌そうな顔でペーパータオルを流河に投げつけた。

「馬鹿だな、疑うのに5%もなにもあるものか。それはつまり5%の確率でキラかもしれない、と100%”僕のことを疑って”いるということじゃあないか。そんな下らないレトリックに騙されるほどおめでたくないんだ」
「はあ。大体はそれで納得してくれるんですけどね」

貴方のお父さんとか、と続けた流河をじろりと月は睨めつける。

「0か1か。単純な問題ですが、単純であればあるほど難解であるのは数少ないこの世の真理ですから。」

ティースプーンを指先でがちゃがちゃと振り回している流河に、月は少しだけ肩を竦めた。

「流河がそんな下らないこと言うなんて少し意外だ」
「有難う御座います。ええ少し、そんな気分なんです」

混ぜただけで流河はカップに口を付けようとしない。マーブルを描くその表面が揺れて、流河はついと視線を上げた。

「難解なものほど面白いですが、……単純なものが面白いとも限りませんね」

ああ、成程と得心のいった顔で月は一つ頷く。

「流河、」
「なんですか」
「僕はこういう場合は寧ろ単純さこそが尊ばれると思うよ」
「そういうものですか」
「さっさとはっきり言え」

笑った月は、自分のカップを手にとってゆっくりと口に運ぶ。

「……月くん、今日は夜泊まっていきませんか」
「0か1以外の返事が欲しいかい」

いいえ、全然とまるで捻りの無い返答をする流河に月は仕舞いには腹を抱えて笑い出した。







いちゃついてるだけ