馬鹿げたカンバス


心地よい青い液体

少し俯いている彼の顔を見た。
「薔薇色の頬が台無しですよ」
つくりものめいたそのコッペリアに手を伸ばせば、口付けたばかりの其処から酷い拒絶の叫びが。

(竜崎)



赤い口紅に込められた意味

「月くん疲れてるんじゃないの」
「……、」
「ほらほら、はいこれ差し入れ!」
「松田さん」
「うん?」
「……なんかもう疲れて殴りたくなってきたので早めに休んでください」

(松田)



佇む黄色い鳥

「…目に痛いです」
「ははっ、何かな流河」
「夜神くんのその独特なセンスだけはなんていうかもう新世界の域です」
「黙れこの引きこもり」
「……制止にはなりますが。」
「注意!立入禁止、進入禁止、落下注意、前方注意、頭上注意」
「……痛いです。もう襲いますよ」

(月)



風になびく緑のはね

「支配することは容易に学び得られる治めることは学び難い」
さあその稚拙な椅子に座り込んだ彼!笑顔で手招いてゆっくりと耳元に囁こう
「君は大勢に支配される必要は無い」
わたしはそれでもその虚栄を心地好く思い

(竜崎)



甘酸っぱい紫

埋め尽くす夕闇を見て彼を見やれば、かわいそうに!少しばかりおばかさんな彼は案の定ありきたりな感傷(を態とらしく隠したような)表情!とびきりの同情と、それなりの恋情と、全てに代えがたい執着をかけて。
「月、月。さあ私を見るのよ」
煩く喚き散らしている男を無視して、鎖に繋がれた彼の何よりも愛しい憂えた瞳を私は一時占拠した。

(海砂)



恥を知らぬピンク

「すきです月くん」
「……嫌いじゃないよ」
「あいしてます」
「……憎くはないよ」
「だから抱いていいですか」
「僕から好きだと言わせなきゃ駄目だ」

(いちゃいちゃ)



黒い枝に結びつけられた

目を閉じる。手を翳す。それでもそんなに強くもない室内灯は僕の目蓋に触れる。
「ならば目を開けていれば良い」
ああ確かに彼の瞳だけは裏切らない深淵の色を

(白月)



白い箱の中身

さあ取り囲み、そのまま
「二代目」
「…なんですかニア」
「貴方はLへ花を捧げたりしたのですか」
「……」
「白い花だけはやめてくださいね」
「馬鹿げてる」
切られた声をゆっくりとなぞり、かの男の軌跡を辿る。 殺した相手に全てを捧げるなんてナンセンス、どうせならワザとらしい贖罪でも願えばいいものを
「花を撒いて精々豪華絢爛な」

(ニア)



撒き散らした灰色

たとえば君に出会う前の世界はとか
「言って欲しい?」
「じゃあ今は」
「……変わらないかも?」
「月くんは子供ですね」
例えば開けた世界がもとのものと違うものであるなんて、そんなチープな夢物語

(竜崎)



全てを射抜く銀色

すべてをかけるには安すぎる
すべてを繋ぐには長すぎる
そしてこの鎖だけ
「24時間行動を共に」
「それでは24時間僕は君から逃げ続けるわけだ」
「今更でしょう?」
「いいや、僕は君から逃げたことなどなかったんだよ」
ただ君が僕が逃げないかと望んでいただけで

(白月)



胸の中の金色

「銀の食器で毒の有無を確認」
「金の食器で欲の深浅を詮議」
「まるでこれは恋の様に輝き」
「金で出来た愛情でよければ」

(竜崎)






ぶちまけられた色彩
赤小灰蝶